Part1 Section 06 事務作業のオンライン化

面倒な事務作業の窓口をオンラインで一本化できる

紙の時代の申請書からは卒業しよう

経理、総務といったバックオフィス業務も、オンライン化で大きく革新できる。メルカリではいっさい紙の書類を使わなかったと述べたが、あらためて、事務作業のオンライン化について掘り下げていこう。

現在、多くの企業では、事務作業にExcelやPDFによる申請書フォーマット、または経理系や勤怠系などで個別の管理ツールを利用している。申請する従業員は個々の書式やツールの使い方を覚え、月に一度申請作業をしなければならない。

申請内容を特定の書式の文書にまとめなければならないという方式は、言ってみれば、紙の時代の名残にすぎない。また、経理系や勤怠系ツールが分かれているのは、ユーザーとしては不便であり、改善の余地ありといえる。では、どのように改善できるだろうか?

Slackとの対話で事務作業を終える

企業のバックオフィス業務は、何らかのツールで行われているので、紙を模した申請書は必須でないはずだ。要は、従業員が入力した情報を、ツールのデータベースに格納できればいい。

筆者が理想と考える「オンラインで働く」事務作業は、上記のようにSlackとの対話によって終えられる。筆者も完全に理想的な環境を整えられてはいないが、考え方としてはこうだ。

Slackを窓口としてツールと従業員の間を仲介させる。例えば、Slackに「経費申請します」と投稿すると、経費申請用のbot(ボット。自動応答システム)が呼び出され、botから「経費申請を受け付けました。名目は何でしょうか?」とメッセージが投稿される。

従業員は「資料費」「機材費」など名目を返信する。続けて「商品名は?」「金額は?」のように質問が投稿され、すべてを返信すると申請が完了する。

このようにすれば、申請書の書式や個別のツールに煩わされることがなくなる。ほかの業務と並行しながらSlackだけで終えられるため、非常に効率がいい。

さらに、支払いに法人カードを利用していれば、その支払いデータから自動的に処理を行うことで申告作業自体を不要にし、確認のみを行えばいいシステムにもできる。

事務作業の現状と理想像の対比

オンプレミスから「SaaS」の組み合わせへ

デジタル化のためのツールは、従来だと自社で独自に開発・運用することが多かった。これを「オンプレミス」という。

これに対して、現在では「SaaS」(サース)が主流だ。SaaSは「Software as a Service」(サービスとして提供されるソフトウェア)の略で、独自に開発・運用するのでなく、サービスに契約して利用するツールを指す。Slackもその一種だ。

開発・運用にかかる費用や工数が抑えられ、常に最新機能を利用できることがSaaSの利点だ。また、サービス間の連携機能に優れたものが多く、「Slackとの対話で事務作業を終える」ような環境も構築しやすい。

Slackは、連携機能が同種のアプリの中でも特に優秀である。さまざまな追加機能が選べる「Appディレクトリ」から、外部サービスとの連携機能を追加できる。

現状では、バックオフィス業務のすべてで理想的な環境を構築することは、まだ難しい。だが、利用できるツールの例を紹介しよう。

申請手順をSlackで確認できる「freee

会計システムの「freee」(フリー)は、経費精算や帳簿の管理、給与計算などに使われるサービスだ。SlackのAppディレクトリからfreeeのAppを追加すると、Slack上で経費申請の承認依頼やコメントなどの通知を受け取れるようになり、Slack上で操作して、承認や差し戻しなども行える。

部下からの申請があるたびに別のツールを起動するのでなく、Slack上で承認作業を完了できるのは、非常に気持ちがいい。

Slackで利用できる「freee」のApp

SlackのAppディレクトリからインストールすると、通知の受け取りや、通知からの承認作業が可能になる。

「iPaaS」でSaaS間の連携を実現する

Appにより直接連携するのでなく、「iPaaS」(アイパース)と呼ばれるサービスを介して連携する方法もある。iPaaSは「Integration Platform as a Service」(サービスとして提供される統合基盤)の略で、SaaS間、またはオンプレミスのツールとSaaSの間を接続する。

これにより、Slackと直接連携できる機能を持たないツールでも、「Slackで『経費精算します』と入力されたら手続きを開始する」のような仕組みが、大規模な開発費用や工数をかけずに構築可能だ。以下の表で、代表的なSaaSやiPaaSを紹介する。これから業務システムの導入を検討する際には、SaaSとの連携機能を条件に加えたい。

Slackと連携可能なSaaS、iPaaSの例

名称 機能 詳細
Salesforce
(セールスフォース)
CRM顧客や商談の情報をAppにより連携してSlackで通知。データの検索やメッセージ追加もSlackから可能になる
Microsoft Teams
(マイクロソフト チームズ)
グループウェア「Microsoft Teams Calls」Appにより通話機能をSlackから起動できる
Googleドライブファイル管理Googleドキュメントなどの文書をオンラインで共有。AppによりSlackから編集やコメントの書き込みが可能
GoogleカレンダーカレンダーAppにより、Slack上で予定の通知や追加が可能。
Zoom
(ズーム)
ビデオ会議Appにより、Slack上でミーティングを開始しメンバーを招待できる。
NetSuite
(ネットスイート)
財務会計ERP(経営資源計画・管理)やCRM(顧客関係管理)など幅広い機能を持つ。iPaaSを介して連携し、通知や各種操作が可能
マネーフォワード クラウド経理・人事経理系や人事系の複数のサービス。「チャットサービス連携」機能により連携し、通知や各種操作が可能
カオナビ人事人事評価や人材管理に利用される。Appにより通知をSlackで受け取り可能になる
ラクロー勤怠PCの操作ログを利用した「打刻レス」勤怠管理。Slack連携により、Slackへの投稿を勤怠管理に利用できる
SmartHR
(スマートエイチアール)
労務雇用契約や保険等の社内外向けの手続きとデータ管理を行う。通知連携機能によりSlackと連携できる
DocuSign
(ドキュサイン)
電子署名契約書等への電子署名を行う。Appにより連携し、Slackから申請や署名ができる
Workato
(ワーカート)
iPaaS大企業向けiPaaS。主要SaaSに対応した「レシピ」で設定が容易。国内に複数の代理店がある
Zapier
(ザピエル)
iPaaS2,000以上のSaaSに対応したiPaaS。「タスク」として連携機能を設定して利用できる

COLUMN「Slackbot」の自動応答で社内ヘルプを作る

Slackが持つ機能により、ユーザーが「経費精算のやり方」と入力したら精算の方法を案内するような自動応答を設定できる。SaaSとの連携ほど複雑なことはできないが、簡単な社内ヘルプや用語辞典のような使い方が可能だ。

設定は、システムメッセージなどを表示する「Slackbot」の「カスタムレスポンス」として行う。

このコンテンツは、インプレスの書籍『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)』の内容をWeb向けに再構成したものです。
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