Part1 Section 01 働き方の分岐点

デジタルシフトこそ企業が今進むべき方向だ

なぜ「通勤」に戻ってしまうのか?

2020年は、多くの人が働き方について考えさせられた年ではなかっただろうか。新型コロナウイルスの影響により、日本では2020年4月に緊急事態宣言が発出されたことに伴って、多くの企業がテレワークに取り組んだ。初めてビデオ会議に参加したり、チャットで仕事のやりとりをしたり、といった経験をした人も多いだろう。

しかし、5月末に緊急事態宣言が解除されると、企業はまたオフィスへの出勤を指示し始めた。感染リスクがまだ小さくはないなか、通勤時間帯の都心の電車は混み合っている。

少しの期間テレワークをやってみて、うまくいかない、生産性が落ちるからやめよう、と考えたのだろうか。だとすれば、非常にもったいないことだ。

はたしてテレワークとは、緊急避難的に行うもの、生産性を犠牲に「しかたなく」行うものなのだろうか? こう尋ねられれば、多くの人はノーと答えるはずだ。

緊急事態宣言中は「未来」を体験できた期間でもあった

デジタルシフト、デジタルトランスフォーメーション(DX)と言われる、デジタル技術を活用した事業や働き方の変革が、2010年代から提唱されている。互いに離れた場所で仕事をするテレワークは、その一環という位置付けだ。

デジタルシフトにより、企業は従来以上の生産性を実現できる。また、デジタルへの変革が進めばオフィススペースにとらわれないテレワークのような働き方も容易になる。

ウイルスの感染拡大という予想外の出来事がきっかけではあったが、この期間のテレワークは、言ってみれば「未来の働き方」を試行する機会でもあった。多くの企業で、コロナ禍中の働き方を貴重な経験として、これからデジタルシフトを加速する判断をしていってほしいと願う。

固定観念を捨てて新しい働き方へと進もう

とはいえ、デジタルシフトは簡単なことではない。「デジタルでいい感じに仕事のやり方を改善する」と漠然としたイメージはあっても、具体論になると、ほとんどの人は当惑してしまうだろう。

デジタルシフトを実現するには、第一にツールや業務に関する十分な知識が必要だ。本書ではタイトルにも挙げているビジネスツール「Slack」を中心に取り上げていくが、その前に、筆者が「オンラインで働く」と呼んでいる、現代のデジタルツールやオンライン環境を前提とした新しい働き方について解説したい。そのうえで、なぜSlackが新しい働き方の中心となるのか、その特徴を紹介していく。

「オンラインで働く」やり方は、従来の常識的な働き方と比べると、かなり変わっている。筆者自身、戸惑ったり、懐疑的に感じたりしながらも次第に意義を理解し、取り入れてきたやり方だ。経験豊富なビジネスパーソンほど、これまでの仕事で積み重ねた経験、言い換えれば「慣れ」や「固定観念」から、新しいやり方に疑問を感じることが多いと思う。

そのようなときはひと呼吸置いて、固定観念をいったん脇に置いてから読み進めてみてほしい。

このコンテンツは、インプレスの書籍『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)』の内容をWeb向けに再構成したものです。
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