Part1 Section 03 会議のオンライン化

会議の目的を突き詰めるとSlackが会議室になる

ビデオ会議が物理的制約をなくす

前セクションでも触れた、デジタルツールによる会議のオンライン化について、あらためて考えてみよう。会議をオンラインで行うというと、まずビデオ会議が思い浮かぶ。それがすべてではないが、わかりやすく、有意義な変化ではある。まずはオフラインの会議とビデオ会議を、下図のように比較してみたい。

オフラインの会議は密なコミュニケーションができるが、時間や場所、会議室の空間という物理的な制約に縛られる。会議室が予約できずに会議が延期になったり、広い会議室が取れないため参加人数を制限したり、ということはよくあるだろう。

対してビデオ会議は、多くの物理的な制約から解放される。会議室の数は無制限でいつでも利用できるし、人数もほぼ意識する必要はなく、数百人でも問題ない。そのうえ、離れていても参加が可能だ。

ビデオ会議が前提になれば、資料の共有方法や議事録のとり方も、おのずと変わってくる。資料はデジタル化する必要があるが、Office文書やPDFで共有するよりも、Googleドキュメントのような文書共有ツールを使うことを推奨する。詳しくは後述するが、資料の作成や共有が、非常に効率よくできるためだ。

議事録もGoogleドキュメントを利用すれば、リアルタイムに参加者と共有しながら議事録をとれるようになる。すると、会議の終了と同時に議事録を完成させることも可能だ。

オフラインの会議とビデオ会議の対比

会議が進化すると時間的制約もなくなる

もう一段階考えを進め、前セクションでも触れた、会議が必ずしも会議の形態ではなくなる進化を考察していこう。下図を参照してほしい。

チームのメンバーがビデオ会議を中心とした情報共有や意思決定のやり方に慣れてくると、ビデオ会議自体の重要性はしだいに下がり、時間を短くしたり頻度を下げたりできるようになる。

会議の前に資料を共有していれば、事前に全員が読んだうえで、簡単な議論や質問の受付をSlackなどで行うことも可能だ。すると、資料の説明は時間をかけず、資料の補足や質問への回答を中心に会議を短く済ませられる。場合によっては会議をなくしたり、別の会議に統合したり、といった対応も考えられるだろう。

意見のすり合わせも、Slack上でできる。ただし集中的に議論するにはビデオ会議がより効率的だ。そして、議論を重ねてあとは承認を待つだけの状態になっていれば、最後はSlackで承認を伝えるだけにできる。

このようにしてビデオ会議を行わずに会議の目的が達成されるようになると、「会議」はビデオ会議の時間的制約からも解放される

会議の目的によりやり方は変わっていく

チャット中心の「非同期会議」をしよう

オンラインでの会議の手法が進化し、ビデオ会議を必ずしも行う必要がなくなったとき、情報共有や意思決定の中心となるのはSlackのようなテキストによるチャットだ。Googleドキュメントの文書をURLで共有したり、交わされた議論や承認などの記録(ログ)を保存したりして、情報共有や意思決定を支援する。

ビデオ会議からチャットを中心にすることで、働き方は大きく変化する。オフラインの会議やビデオ会議は、全員で同じ時間を共有するが、これを「同期型」コミュニケーションという。同期型は意見のすり合わせなど密なコミュニケーションに有効だが、どうしても時間が拘束される難点がある。

対して、チャットなど、同じ時間を共有する必要がないものは「非同期型」コミュニケーションという。やりとりに時間を要する場合もあるが、おのおのが自由に時間を使えることが利点だ。両者のイメージを下図に示す。

会議をオンライン化することのゴールは、情報共有や意思決定の手段を、同期型から非同期型に変えることだ。非同期化によって、働く時間の自由度を飛躍的に高められる

同期コミュニケーションと非同期コミュニケーション

Slackはオンライン会議室だ

筆者はいつも「Slackはオンライン会議室だ」と言っている。これだけで納得してもらえることは少ないが、非同期会議の意義を踏まえれば、オンライン会議室という呼び方がふさわしいと感じてもらえるだろう。

仕事のために必要な情報共有や意思決定の中心は、ビデオ会議ではなくSlackが担う。それが、オンラインで働くチームの理想的な姿だ。

Slackは「オンライン会議室」

COLUMNSlackは「オンライン執務室」でもある

Slackでは会議に限らず日常的なやりとりも行うため、オンライン会議室であると同時に、オンラインの執務室でもある。おもしろいのは、リアルの執務室よりもオープンに運用できる点だ。

例えば、企業のIT部門は部外者があまり気軽に出入りできないエリアで執務するのが一般的だろう。しかし、Slack上のコミュニケーションの場であるチャンネルをオープン(誰でも参加可能)にしていれば、セキュリティを強化したい総務部員や新規事業を考えている事業部のスタッフなど、IT部門の仕事に関心のある人が、自由に参加できる。

すると、部門内だけでなく周囲にも何となく情報が共有され、縦割りの組織にありがちな横連携の難しさが軽減される。ある課題について部内で相談していたら「その件ならうちの部署が協力できますよ」と、周囲からコメントをもらえて解決の近道が開ける、といったこともある。

このコンテンツは、インプレスの書籍『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)』の内容をWeb向けに再構成したものです。
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