具体化し始めたWindows Azureと次期Office

 マイクロソフトは世界的なシェアを誇るIT業界の巨人ですが、ここ数年は以前ほどの存在感がありませんでした。それはIT業界のWebへのシフト、そしてクラウドコンピューティングのブームに対して立ち遅れた印象があったためです。

 しかし、2008年に発表されたクラウド上のOS「Windows Azure」が、2010年1月に正式運用を開始。また、Microsoft Officeの次期バージョン「Microsoft Office 2010」(以下Office 2010)では、従来のパソコン版とモバイル版に加え、ブラウザー版として「Office Web Apps」も提供すると発表、2010年前半の発売がアナウンスされました。マイクロソフトは2010年になり、ようやくクラウドに向けて本格始動する気配を見せています。

●マイクロソフトのビジョン「3スクリーン+クラウド」

あらゆるデバイスをクラウドで連携

 2009年11月、米MicrosoftのCEOであるスティーブ・バルマー氏は、クラウドに向けた同社のビジョンとして「3スクリーン+クラウド」を発表しました。

 「3スクリーン」とは、パソコン、携帯電話・スマートフォン、テレビ(大型スクリーンデバイス)のこと。テレビの中には、映像コンテンツ配信サービス「Microsoft Mediaroom」(日本では未提供)に対応した同社のゲーム機「Xbox 360」も含まれます。

 そして「クラウド」とは、クラウドサービスの基盤となるWindows Azureをはじめ、一般ユーザー向けサービス「Windows Live」、企業向け情報共有サービス「Microsoft Online Services」、さらにOffice 2010のブラウザー版であるOffice Web Appsといったさまざまなサービス群を指します。

 「あらゆるデバイスをクラウドによって連携させ、さらに音声やタッチ操作などの新しいユーザーインターフェースを組み合わせることで、新しいユーザー体験をもたらす」というのが、3スクリーン+クラウドの趣旨です。

 とはいえ、これだけではかなり抽象的な概念です。具体的にはどのようなサービスや製品が登場し、私たちユーザーはどのような体験ができるのか、これから1つずつ見ていきましょう。

[ヒント]実は長い実績があるマイクロソフトのWebサービス

Webサービスの事業者として後発と思われかねないマイクロソフトですが、実際は違います。1997年から世界最大規模のWebメール「Hotmail」( 現在の「Windows Live Hotmail」) を運営し、1999年9月には「MSN Messenger」(現在の「Windows Live Messenger」)を開始するなど、多くのサービスを提供しています。

[ヒント]新しいユーザー体験をもたらす「Windowsタッチ」と「Silverlight」

マイクロソフトの「新しいユーザーインターフェース」としては、Windows 7に搭載されたディスプレイ上をタッチして操作できる機能「Windowsタッチ」がもっとも注目されています。現在は対応するパソコンなどが少しずつ登場し始めた段階ですが、大きな画面を指の動きで自在に操作できるのは、iPhoneなどスマートフォンの小さな画面とは違う爽快感や一体感があります。また、ブラウザーにリッチなインターフェースを追加するプラグイン「Silverlight」も、徐々に普及が進んでいます。これはアドビシステムズの「Flash」に対抗する技術で、音声や動画の再生、立体感やダイナミックな動きのあるサイト作りなどが可能になります。

Windowsタッチ対応 のパソコンでは、ディスプレイ上を指などでタッチして操作できる