できるネット+で解説記事も掲載している、ソニーのミニノートPC「VAIO type P」。やりたいことやライフスタイルに合わせて、さまざまな活用アイデアが考えられます。

以前にケータイジャーナリスト・石野氏の活用法を紹介していますが、今度はこのマシンを開発した人たちが、どう使っているかを聞いてみたい――。ということで、ソニーのVAIO type P開発陣にインタビューをしてきました。

インタビューにご対応いただいたのは、VAIO type Pプロジェクトマネージャ・設計リーダーの鈴木氏、製品企画担当の伊藤氏、国内マーケティング担当の岩井氏の3人です。


(写真手前より)VAIO事業本部 PC事業部 シニアプログラムマネジャー 鈴木一也氏
VAIO事業本部 企画戦略部門 プロダクトプロデューサー 伊藤好文氏
ソニーマーケティング株式会社 VAIOマーケティング担当 岩井剛氏


白い壁紙でバッテリー消費を軽減

――お使いのVAIO type Pのモデルは何ですか?

鈴木:私が持っているのは、実は試作機です。試作機は2008年8月ごろにはできていて、当時から使っています。構成はAtom Z540 1.86GHz(インタビュー実施時のVAIOオーナーメイドで選択できた最上位のプロセッサ)に128GBのSSD、ワンセグを搭載しています。OSはWindows Vista Businessです。

――試作機というのは、製品版とはどう違うのですか?


試作機は型番が「VGN-XXXX」となっている

鈴木:試作機の段階ではほぼ完成していて、変更するとしても微調整しか行わないので、大きな違いはありません。目立つところでは、型番の表示が違う(写真参照)くらいですね。

――カスタマイズはされていますか?

鈴木:高速化のために、Windows Vistaの自動インデックスと自動デフラグを停止にしています。あと表示のカスタマイズも多少行っていますね。それから、バッテリー駆動時間を延ばすために、壁紙を真っ白にしています。

※自動インデックス停止、自動デフラグ停止、視覚効果変更などカスタマイズの方法はこちらを参照:
カスタマイズでVistaも軽快! ケータイジャーナリスト・石野純也のVAIO type Pレビュー(前編)

――壁紙は真っ白の方がいいわけですか?

鈴木:VAIO type Pの液晶は「ノーマリーホワイト」というもので、電圧がかかっていない状態では白くなるのです。なので、白い壁紙の方がバッテリー消費が抑えられるわけですね(編集部注:電圧がかかっていない状態で黒くなる「ノーマリーブラック」の液晶もあります)。

――どのような使い方をされていますか?

鈴木:会社ではセカンドマシンとして、メールやテキストの編集などに使っています。VAIO type Pを購入されるお客様も多くはセカンドマシンとしてお使いになると考えているので、次のモデルに向けて「2台目のパソコンはどうあるべきか?」と考えながら使っています。

――セカンドマシンの用途として、具体的にはどのようなものをお考えですか?

鈴木:今はiGoogleを試しています。2台目のPCを持ったとき、いちばん困るのがメール環境ですよね。会社のメール以外はGmailにまとめてしまって、会社のメールはPOPメールのソフトを使って、という形がスマートかなと思っています。


iGoogleを利用する鈴木氏。画面右側には「美人時計」のガジェットが

外付けディスプレイ+Bluetoothマウスで、メインマシンとしてバリバリ活用

――伊藤さんのマシンの構成は?

伊藤:スペック的には鈴木とほぼ同じで、オニキスブラック(VAIOオーナーメイド限定カラー)のAtom Z540、SSD 128GB、ワンセグ搭載でWindows Vista Businessです。カスタマイズは特にしていません。ノーマルな状態での使い心地を知っておくことも重要ですので。

――位置付けとしては、やはりセカンドマシンですか?

伊藤:私の場合は会社のメインマシンになっています。仕事柄プレゼンをすることが多いのですが、Microsoft Officeをインストールしていて、VAIO type P一台でスライドの作成から再生までやっています。

デスクでは外部ディスプレイとBluetoothマウスを利用していて、PowerPointなどの文書編集は外部ディスプレイに映して行うことが多いです。本体のディスプレイは横長なので、Outlookでメールの一覧と本文をどちらも大きく表示しておけるのが気に入っています。ウォールマウントプラグアダプターとディスプレイ/LANアダプター(VGP-DA10)は、常に持ち歩いています。

※ウォールマウントプラグアダプターやディスプレイ/LANアダプターなど周辺機器については、こちらを参照してください:
[VAIO type P対応の周辺機器] 周辺機器でVAIO type Pを拡張しよう


Lバッテリーの安心感で、仕事にもプライベートにも活用

――岩井さんも同じくオニキスブラックですね。

岩井:そうです。そして構成も2人とほぼ同じで、Atom Z540にSSD 128GBです。最初はガーネットレッドにしようと思っていたのですが、友人がみんなガーネットレッドを買っていたのでオニキスブラックにしました。カスタマイズとしては自動インデックスと自動デフラグを切っていますが、視覚効果などはそのままです。これで十分なパフォーマンスですね。

――Lバッテリーが付いていますね。

岩井:最初はSバッテリーを付けて、フラットなボディのままで使おうと考えていました。でも、Lバッテリーでもそれほど出っ張りが気にならず、重くもなかったので、こちらにしました。これまでのマシンでもLバッテリーを使ってきましたし、長時間駆動の安心感がありますね。

鈴木:岩井は3人の中で一番のヘビーモバイラーです(笑)。

岩井:これまでにも、VAIO C1とかVAIO Uとか、一癖あるマシンを使ってきています。

――それはハードコアな遍歴ですね。Lバッテリーだと本体に傾斜が付きますが、使用感はどうでしょう?

岩井:傾斜が付いている方が(キーを)打ちやすいと思います。会社ではセカンドマシンとして持ち歩いていて、プレゼンや議事録書き、メールなどに使っています。

プライベートではWebを見たりブログを書いたり、写真を取り込んだり、といった用途が主ですね。外出先でのモバイル接続に、以前はイー・モバイルを利用していたのですが、最近はUQ WiMAXがメインになっています。メールは先ほど鈴木が言ったような形で、POPメールとGmailを併用しています。


岩井氏のスティックポインターにはビザビの「Cap P! P! for VAIO Type P」が。試作版をモニターとして入手し、試用中だそうです(関連記事:サードパーティから周辺機器3種が発売

社内での移動時は、だいたいポケットに入れて移動。薄手のサマージャケットだと、さすがに重そうです

――今日はそれぞれバッグもお持ちいただいていますが、岩井さんだけはありませんね。

岩井:私は、会社での移動はこのままで、ポケットに入れて持ち歩いています。今日も駅の向こうから(インタビューを実施したのは品川駅の東口側にあるソニー本社。岩井氏が普段いるのは、反対の西口側にあるソニーマーケティングのオフィス)、このままポケットに入れて来ました。

こだわりに合わせて、シンプルor目立つバッグ

――鈴木さんのバッグはシンプルですね。

鈴木:VAIO type Pだけが入るコンパクトなバッグを探していて、ソニ☆モバの記事で見つけて買いました。こう肩にかけて、電車の中などでは背中に回しておいて、取り出すときは前に持ってくるんです。荷物が少ないときにはこれだけで出かけることもあります。


移動時には背中に回し、取り出すときは前に回す。同席者から「便利だ」、「いいですね」の声多数

――伊藤さんのバッグは非常に目立つ色です。


ビビッドな水色の伊藤氏のバッグ。「ちょっと色が違うと、何かの集金の人みたいですね(岩井氏談)」

伊藤:これは社内での持ち歩き専用です。VAIO type Pがぴったり入るバッグが欲しかったんですよ。このバッグを見つけたときは試作機ができあがる前だったのですが、すぐ買ってしまったんです(笑)。

――確かに、VAIO type P本体とアダプター類がちょうど収まっています。そして、細いから他のミニノートPCは入らないですね。

伊藤:そうなんです。商談でお客様の前に持って行く機会も多いのでインパクトを重視して。VAIO type Pのサイズじゃないと入らないというアピールでもあります(笑)。

プライベートでは別のショルダーバッグを使っています。ポーチ(ソニー製「VGP-CPP1」)に入れたVAIO type Pの本体だけを入れて、あと水筒も入れて、子どもたちと一緒に出かけることが多いですね。荷物が多いときには、これをさらにトートバッグに入れます。


伊藤氏がプライベートでよく利用しているバッグと水筒


お父さんが外出先で使うことで、家族に感謝されるようにしたい

――外出先ではどんな用途に使われますか?

伊藤:x-Radarなどの地図サービスを使いますね。昼ごはんを食べる場所を調べたり。GPSを搭載したモデルではありませんが、都内の私の行動範囲では、「PlaceEngine」でだいたい位置情報は取れます。

モバイル通信には、公衆無線LANの「WIRELESS GATE」とモバイルWiMAXの「UQ WiMAX」を使っています。この2サービスでカバーできないエリアに行くときには、(社内で共有している)ワイヤレスWAN(NTTドコモのFOMA通信カード)搭載モデルを持って行くこともあります。ドコモのカバー範囲の広さは心強いですね。

※「x-Radar」や「PlaceEngine」についてはこちらを参照してください:
[x-RadarとプロアトラスSV4 for VAIO] VAIO type Pを外出先のナビにしよう

※「WIRESS GATE」についてはこちらを参照してください:
公衆無線LANサービス一覧(編集部ブログ)


――ブログの更新をすることなどはありますか?

伊藤:個人的な日記のブログを書いていますが、家族と一緒のときにはしません。きっと怒られます(笑)。これだけ小さくて持ち出しやすいマシンですから、家族サービスとして使って、家族に喜ばれる、という形をもっと提案したいと思います。

ユーザーの中心となる方は30代前後の男性ですから、小さいお子さんがいる方も多いですよね。お父さんがVAIO type Pを使うことで、家族に感謝されたり、尊敬されたりするような機能やサービスを増やしていきたいです。

――それは大事です。購入の際には、奥さんに納得してもらえることも重要ですよね。鈴木さんは、プライベートでモバイルはされますか?

鈴木:私はモバイル回線を持っていないんですよ。外出時は、出張先のホテルなどで利用するぐらいです。

――そこはわりと地味な使い方なんですね。

伊藤:でも、ブログはけっこうまめに書いていますよ。

鈴木:プライベートなブログをやっているもので(笑)。移動中などの空き時間には下書きを書いて貯めています。あと、旅行先などで撮った写真もVAIO type Pの中で整理します。

ユーザー目線になって気付いたこと

――ネットに接続はしなくても、いろんな作業にヘビーに使うわけですね。ところで、今は開発者から一ユーザーとなったわけですが、ユーザーの目線になって改めて気付いたことはありますか?

鈴木:画面が見づらいとき、開発中は前屈みになって見ることを想定していました。ですが実際に自分で使ってみると、持ち上げて顔に近づけて見ることが多いと気づきました。重さが苦にならないので、ひょいと持ち上げてしまうんですね。(持ち上げたままだとスティックポインターは使いにくくなるので)カーソルキーでスクロールしながらWebを見たりしています。


「こうやって、ひょいと持ち上げて見ることが多くなりますね(鈴木氏)」

――そういう使い方だと、本体の横にポインティングデバイスなどが欲しくなりますね。

鈴木:そうですね。それと「寝モバ」というやつですか。逆さにして寝転がりながら使っていると、VAIO type Pはヒンジが柔らかいのでディスプレイが閉じてきてしまうことがあるんですよね。これはネットに書かれていたのですが、なるほどと思いました。

伊藤:私は自分がよく使うからというのもありますが、地図関係のサービスの使い勝手を良くしたいなと思います。それから、ネットワーク環境についても気になりますね。もっと速くつながりたい。

岩井:私もそこが気になります。現在の公衆無線LANやモデムカードでは、いざ使いたいときにすぐつなげられなくて、少し待たないといけないですね。接続のスムーズさを追求するなら、ワイヤレスWANを搭載するのがベストとなります。

――ネットワークの接続はソニーの努力だけでは解決しない問題かもしれませんが、確かにもっとスムーズになってほしいですね。

VAIO type P Windows XPモデルも登場

――今挙げていただいたあたりは、今後改善を期待していいポイントでしょうか? 2009年末にはWindows 7が登場ということで、新モデルも気になります。

鈴木:今後のことは基本的に申し上げられないのですが、よいものをご提供できるよう、努力しています。

――一方で、Windows XPモデルが登場しましたね。

鈴木:VAIO type Pの発表直後からWindows XPに関する質問は多くいただいていました。本当はVista、XPの両方をやりたかったんですよね。

Windows Vistaにはフォントがきれいなこと、動画再生支援機能があること、といった魅力があります。ですが、Windows XPの方が基本的な動作が軽いことは確かで、両方を同時に開発できなかったという問題もあってWindows Vistaのみの発売としていたのです。

※VAIO type P+Windows Vistaでの動画再生支援機能については、こちらを参照してください:
[AVCHD動画の取り込みと編集] VAIO type Pにハンディカムで撮った動画を取り込もう

今回は、ユーザーの皆様からのご要望が多かったのと、ドライバの用意が整ったこともあり、Windows XP版の発表となりました。

――OSの選択肢が広がって、さらに多くのユーザーにとって魅力的になりますね。本日はありがとうございました。

インタビューを終えて

今回のインタビューで印象的だったことが3つあります。ひとつは「開発スタッフだからといってそれほど特別なカスタマイズはしていない」ということ。「省電力のために白い壁紙」というワザはあまり知られていないかもしれませんが、それ以外は、先に紹介した石野氏のカスタマイズとほぼ同じか、それよりもノーマルな設定でした。もともと十分なパワーを持つVAIO type Pの、しかもVAIOオーナーメイドで設定できる最高のスペックなので、カスタマイズはそれほど徹底的にやらなくても十分に実用に耐えます。

もうひとつは「バッグや見た目のカスタマイズの話が盛り上がる」ということ。3人とも常に持ち歩いて仕事でもプライベートでもお使いなので、持ち歩きの快適さを追求したり、ふだんの利用を楽しんだり、また仕事上のこともあってVAIO type Pのコンパクトさを際立たせたり、といった視点から、バッグ選びやちょっとした見た目のカスタマイズに、かなりのこだわりをお持ちでした。常に持ち歩く道具は、こうした感覚的な楽しさ、気持ちよさも追求したいものです。

最後にもうひとつは「ミニノートPCの使い方は人それぞれ」ということ。われわれ編集部のスタッフ視点だと「ミニノートPCを買う=モバイル回線も一緒」というパターンをいつも考えてしまいますが、鈴木氏は、個人ではモバイル回線をお持ちでないということでした。そのかわり、自宅や職場など回線が利用できる場所ではVAIO type Pからインターネットを活用し(自宅ではインスタントモードのFirefoxを使うことが多いのだとか)、移動中などの空き時間にはネット接続せずに黙々とブログの下書きをするというお話からは、とてもマメな姿が浮かびます。

一方で、伊藤氏、岩井氏のお2人ともが最新のモバイルブロードバンド接続サービス「UQ WiMAX」をお使いというのはさすが。また、そろって「インターネットにもっとスムーズに接続したい」と述べていた点が印象に残りました。これはパソコン側だけで解決できる問題ではありませんが、モバイルユーザーにとっては非常に気になる点です。モバイルブロードバンド接続サービス側と協力して、今後はより快適な接続法が提供されたらうれしいですね。


※参考記事

VAIO type PでのWindows 7の利用については、こちらの記事が参考になります。

【山田祥平のWindows 7カウントダウン】 ベータに対して、さらに磨きがかかった完成度を提供するRC ~VAIO type PからMacBookまで、7台のPCにインストール(PC Watch)

UQ WiMAXについてはこちら。
UQ WiMAXがサービス開始、「真のモバイルブロードバンドを」(ケータイWatch)