できるネット+では、さまざまなデジタルデバイスやソフトウェア、Webサービスの使い方を解説しています。が、今の時代は技術も社会も複雑になってきていて、それらを上手に使えることが、すぐにいいこと(何らかの利益や、楽しいこと、幸せなこと)につながるとは限りません。

仕事でもプライベートでもさまざまな場面において、適切なデバイスやサービスを、適切な方法で使うことによって生産性を上げる、コミュニケーションを円滑にする、友達を増やす、お金を貯める......etc. という、高度な応用力が求められるようになってきています。

そこで、このコーナーでは、IT・デジタル技術をすでにバリバリ使いこなしている方たちが、具体的にどのようにして仕事や生活に活用しているのか――という「できる人のデジタル仕事術」を伺い、お手本にしていきたいと考えています。

第1回は、できるネット+で解説記事を掲載しているRSSリーダー「livedoor Reader」を提供する株式会社ライブドアに、開発スタッフのlivedoor Reader+関連サービスの活用術を教わりに行きました。

お話を伺ったlivedoorディレクターズのお二人

livedoor Readerのフィードは「レート」で管理

――livedoor Readerについて「できるネット+」でも使い方の解説記事を掲載しているのですが、今回は開発スタッフならではの、使い方を教えていただきたいと思います。


石野和明さん
株式会社ライブドア ブログビジネスユニット 企画グループ ディレクター

livedoor Blog、livedoor Reader、livedoor クリップ、livedoor ナレッジのディレクションを担当。マークアップエンジニアを経て、2008年よりディレクターとして活躍。
livedoor プロフィール

石野:基本的には、レート※1別にフィードを管理しています。レート5のものは業務中でも常時チェックして、未読0を保つように心がけています。レート4もだいたい業務中に読む、レート3はちょっと時間のあるときに、というような感じです。

――カテゴリーでなくてレートが重要なんですね。低いレートのフィードは、未読が残っていても気にしないわけですか。

石野:そうですね。登録フィードを全部読むのは本当に時間があるときだけです。

――レート5には、例えばどんなフィードが入っていますか?


坪田朋さん
株式会社ライブドア ブログビジネスユニット 企画グループ グループリーダー/ディレクター

livedoor Blogをメインに、livedoor プロフィールも担当。livedoor クリップ、livedoor Readerなども含めたグループリーダー。
livedoor プロフィール

石野:他社の開発ブログが入っています。それから坪田のクリップ(livedoor クリップ※2)やブログ(livedoor Blog※3)もレート5ですね。その他、INTERNET WatchCNET JapanITmediaなどのニュースサイト、有力なブログなどはレート3~4に設定しています。

坪田:僕も同じようにレートで管理しています。クリップもサイト上でなくリーダー(livedoor Reader)でチェックして、石野と同じく同僚や身近な人のブログやクリップはレート5です。社長(出澤剛氏)のクリップCTO(池邉智洋氏)のクリップもチェックします。

――社長もクリップをお使いなんですか。

坪田:もちろんです。社長や同僚がチェックした情報は自分もチェックしておこう、ということで、一種の情報共有ですね。CTOがチェックする技術系の情報は高度すぎて理解できないこともありますが、開発者とのコミュニケーションのためにも、概要だけでも把握しておくことは必要です。

石野:そうして共有しているクリップやブログについて、よく「さっきのあれだけど......」といった感じで話します。そういう話題の共有は早い方がいいので、レート5ですね。

――同僚のフィルタを通した情報は、価値が高いわけですね。

Reader、Blog、クリップで情報公開&共有

――ブログに書いたり、クリップしたりしたものをlivedoor Readerに集約して、業務中でも時間を取ってチェックし、気になる話題はその場で話す、という形で3つのサービスが活用されているわけですね。話すのはメールやインスタントメッセンジャーですか?

石野:社内のIRC※4やSkype※5などを使うこともありますし、もちろん口頭で話すこともあります。

――ブログにはどんな内容を書かれていますか?

坪田:仕事のことを書いています。「livedoor Blogを今後こうしたい」というような。あと、食べたものを載せるフォトログと(笑)。

石野:僕はいっぱい作って、いろいろ放置して(笑)。仕事のメモなどを書いていますね。

――そうやってブログに今後やりたいことなどを書いたら、他社がまねしてしまうのでは......という心配もあるかと思います。

坪田:ライブドアではあんまりそういう意識はないというか、他社を敵(ライバル)として見るというよりは、一緒に盛り上げていこう、という意識が強いんですね。それに、アイデアを書いたらコメントをいただけて、さらに考えが進むということもあります。今のところ、それほど情報を公開するデメリットは感じていません。

情報を「どうしたら公開できるか?」と考える

――情報の公開といえば、ディレクターのノウハウを開示する「livedoor ディレクターBlog」もありますよね。リクルーティングを意識した内容ですが......。

坪田:僕はそのディレクターBlogを見てライブドアに応募したんです。メディア事業をしている企業を探していたときにディレクターBlogを見つけて、社風やスピリットに引かれました。特に印象的だったのが"エンジニアは決して魔法使いではありません"と書かれた記事で、その下にあった応募用のバナーをクリックして......今に至ります。

石野:坪田はディレクターBlogを見て入社した1人目で、「ディレクターBlogチルドレン」と呼ばれています(笑)。

――ディレクターBlogによって優秀で会社への親和性も高い人が採用できたというのは、会社としてはいいことですよね。情報を公開して大きなリターンが得られた例ですね。

石野:もちろん他社との守秘契約がある情報などは公開しませんが、基本的にライブドアでは、情報について「公開する・しない」ではなく「どうしたら公開できるか?」という考え方をします。

坪田:以前はディレクターBlogで「livedoor Blogの売上比率について」という記事を公開していますが、これは、普通はなかなか公開できない情報だと思います。こういった情報を公開して、他社にとって何かしら参考になることがあったら、業界活性化につながるだろうと信じているんです。それで、業界全体を盛り上げていきたいと。

ライブドアのディレクター陣がつづる「livedoor ディレクターBlog」。写真は坪田さんが入社するきっかけとなった記事


――Reader、Blog、クリップといった現在のサービス群に、これから加えたい機能とか、サービスの構想はありますか?

坪田:今あるサービス群は、ITリテラシーがある程度高い人でないと、なかなか使いこなせないと思います。もっと広く、Webにかかわらない企業の人にも使って、便利だと感じてほしいですね。先日livedoor Blogに「グループブログ」という新機能を追加しました。これはグループ単位で、つまり複数人でひとつのブログを更新するという使い方です。例えばリテラシーの高いメンバー1人が記事を書いたら、極端な話、他のメンバーは記事を投稿しなくても情報が共有されていく仕組みです。こういったシステムを増やしていくことが、ひとつの手法かなと考えています。

石野:ログインの手間を減らしたい、もっと言えばログインしなくても使えるものを作っていきたいです。何かの前にログインする作業が入ると、どうしてもそこに壁ができてしまいますよね。例えばlivedoor Readerにテーマ別共有アカウントがあって、みんなでフィードの編集ができるとか、そういったものを考えていきたいです。

※1:レート
livedoor Readerに追加したフィード1件ごとに、1~5、または0(未設定)で設定できる点数。
詳しい使い方はこちら:RSSリーダー [レート] 更新頻度や重要度でフィードを分類するには - できるネット+(できるネットプラス)
※2:livedoor クリップ
ライブドアが提供するソーシャルブックマークサービス。
概要と使い方はこちら:RSSリーダー [livedoorクリップ] あとで読み返したい記事をクリップするには
※3:livedoor Blog
ライブドアが提供するブログサービス。
http://blog.livedoor.com/
※4:IRC(Internet Relay Chat)
インターネットを通じてリアルタイムに会話するためのツール。特定のサーバーにユーザーがアクセスし、設置されたチャンネルに集まり、会話をする。リアルタイム会話ツールとしてはインスタントメッセンジャーが広く使われいるが、IRCは、ユーザー間で友達設定をしなくても、チャンネルに集まった者どうしですぐ会話できる。ライブドアでは社内にIRCサーバーと設置している。
※5:Skype(スカイプ)
ルクセンブルグのSkype社が提供するインターネット電話サービス。インスタントメッセンジャーのようにテキストでの会話にも利用できるほか、一般回線の電話との通話、Skypeユーザー同士でのビデオチャットが利用可能。Windows、Mac OS、Linuxに加えPSP、iPhoneなど、多くの環境に対応している。


後編では、ライブドア社内・開発チーム内での情報共有・コミュニケーション術を中心に伺います。