【Excel講師の仕事術】自己流のエクセル、卒業しませんか? この連載では、エクセルを操作するときの「ルール」を決めることで、ミスを減らして業務を効率化していく仕事術を解説します。

ルール 01
アクティブセルをA1に戻すのは「絶対」
作業を再開しやすいだけでなくうっかりミスも防げる

ルールであり礼儀でもある

Excelでファイルを保存すると、入力・修正したデータだけでなく、開いていたワークシートとアクティブセルの位置も記録されることをご存じでしょうか? ファイルの内容が重要なのは当然のことですが、作業時の状態まで意識して保存している人は、筆者の経験上、少ないのではないかと思います。

ワークシートとアクティブセルの状態は、次にファイルを開いて作業を始めるときの「再開のしやすさ」に大きく影響します。そこで覚えてほしいのが最初のルール。ファイルを保存するときは、次の2点を意識することを習慣にしてください。

  • いちばん左側のワークシートを開いておく
  • アクティブセルをセルA1に戻しておく

以下の表を見てください。これは月ごとにシートが分かれた出張費申請書のファイルですが、[9月分]シートのセルF24にアクティブセルがある状態で保存されています。次回は、これとまったく同じ状態で作業を再開することになります。

9月分の合計についての作業を続けたいのなら別ですが、そうではない場合、再開しやすい状態とはいえません。前回の作業を知らない他人が開いたのなら、なおさらでしょう。

シートやセルが中途半端な位置にある表

エクセルの保存時にアクティブセルを意識してる? A1に戻すのは「絶対」【Excel講師の仕事術】

以下の図は前述の2点に従って、いちばん左側のワークシートを開き、アクティブセルをセルA1に戻しています。直近の月、かつシートの開始位置から作業を始められるため、誰にとっても再開しやすい状態になっているのではないでしょうか。

左端のシートのセルA1を選択した表

エクセルの保存時にアクティブセルを意識してる? A1に戻すのは「絶対」【Excel講師の仕事術】

セルA1への移動は、Windowsなら[Ctrl]+[Home]キーのショートカットで一発です。Macなら[control]+[fn]+[←]キーですが、[fn]キーを使えるようにするには、あらかじめシステム環境設定の[キーボード]画面での設定が必要になります。

Macのショートカットキーに関しては、本コンテンツでは以降も、この設定がされていることを前提として解説します。

[システム環境設定]のキーボード(Mac)

エクセルの保存時にアクティブセルを意識してる? A1に戻すのは「絶対」【Excel講師の仕事術】

Excelにおいて、セルA1は「ホームポジション」と呼ばれます。キーボード入力時の指の基本配置のこともホームポジションと呼びますが、それと同様に、アクティブセルがセルA1にあることは「作業をもっとも効率よく始められる状態」と表現できます。

アクティブセルをセルA1にして保存することは、次にファイルを開く人が作業をしやすくするための礼儀である、ともいえるでしょう。武道において「礼に始まり礼に終わる」という格言がありますが、これはExcelにも当てはまるのではないかと、筆者自身、さまざまな現場を見るうちに考えるようになりました。

複数シートでありがちなミスを防ぐ

いちばん左側のワークシートを開いた状態で保存することは、同じひな型のワークシートが複数存在するファイルにおいて、ミスを防止する効果が期待できます。

例えば、前述の状態で保存したファイルを次に開いた場合、シートをコピーして用意しておいた[10月分]シートにデータを入力するつもりが、ファイルを開いたときに表示された[9月分]シートに誤って上書きしてしまうミスが起こりえます。以下のような状況ですが、同じひな型を使い回していると非常によくある話です。

再開しにくい状態はミスを招く

エクセルの保存時にアクティブセルを意識してる? A1に戻すのは「絶対」【Excel講師の仕事術】

1つのブックにたくさんのワークシートがあっても、常にいちばん左側のシートから再開できれば、スムーズに作業を始めることができます。

顧客用ファイルでは「全シートA1」が望ましい

なお、複数のワークシートがあるファイルで、すべてのワークシートのアクティブセルをセルA1に戻す必要はありません。原則として、いちばん左側のワークシートだけで十分です。

しかし、会議で使うためのファイルや、顧客に提出するファイルは例外です。すべてのワークシートのアクティブセルがセルA1となっているほうが望ましいでしょう。

例えば、顧客のオフィスを訪問し、Excelの画面をディスプレイに映し出して、提出するファイルについて説明する場面を思い浮かべてください。最初のワークシートはセルA1が表示されたものの、次のワークシートに移動すると中途半端なセルの位置になるのでは、プレゼンがやりにくくなります。

残っていた範囲選択や、関係のないデータが映ってしまったりするのも、「作業途中」のような印象を与えてしまい、よくありません。すべてのワークシートがセルA1から開始されれば、隙がなく整った状態であることを印象づけられるでしょう。

このルールは、一見すると「窓枠のホコリまで許さない姑の小言」のようでもありますが、論理的に考えても実利のあることです。ぜひ日頃からの習慣にしてください。

まとめ
  • ファイルを保存するとアクティブセルの位置も保存される
  • いちばん左のシートのセルA1で保存することを習慣に

関連記事