「パスワードは次のメールで」の問題

「PPAP」といえば、2016年に大ヒットしたピコ太郎氏の「ペンパイナッポーアッポーペン」の略称として有名ですが、ここでいうPPAPは、まったく異なるもの。「Passwordつきzipファイルを送ります Passwordを送ります An号化 Protocol」つまり、パスワード付きZIPファイルをメールで送り、パスワードは別のメール送るやりとりのことを指しています。

こうしたパスワード別送方式は企業によっては多用されていますが、セキュリティ面で安全とは言い難いこと、そして、送受信ともに(特に受信側に)無用の手間がかかることが指摘されていました。

「PPAP」の命名は、大泰司章氏によるものです。大泰司氏が一般財団法人日本情報経済社会推進協会に所属していたころに使われ始め、2020年に入って広く話題になっています。大泰司氏は、現在PPAP総研を起業されています。

PPAPとは?
「くたばれPPAP! ~メールにファイルを添付する習慣を変えるところから始める働き方改革~」より

参考:
PPAPをやめましょう~働き方改革の第一歩~ 情報通 2020年5月号
座談会 「社会からPPAP をなくすには?」|情報処理学会・学会誌「情報処理」|note

霞が関でも廃止の動き

かねてより問題が指摘されていたPPAP――パスワード付きZIP添付によるデータ共有ですが、2020年11月にデジタル改革担当大臣が、中央省庁においてこの利用をやめることを方針を発表しています。

平井卓也デジタル改革担当相は11月17日の定例会見で、中央省庁の職員が文書などのデータをメールで送信する際に使うパスワード付きzipファイルを廃止する方針であると明らかにした。政府の意見募集サイト「デジタル改革アイデアボックス」の意見を採用した。
霞が関でパスワード付きzipファイルを廃止へ 平井デジタル相 - ITmedia NEWS

2021年1月21日には、日経XTECHが日立製作所が廃止の方針であることを報道。この記事に「PPAP」が使われたことから、SNSで話題が広がりました。

日立製作所が2021年度から電子メールへの暗号化ファイルの添付を社内で禁止することが明らかになった。子会社の日立ソリューションズが「秘文」ブランドで販売していたメールの添付ファイルを自動で暗号化するツールも、2017年に販売を終了していた。
日立がPPAP全面禁止へ、「秘文」の添付ファイル自動暗号化ツールも既に販売終了 | 日経クロステック(xTECH)

代替手段はグループウェアやクラウドストレージ

パスワード付きZIPによるやりとりが慣行化している企業では、一部の人が疑問を感じても、廃止することは難しかったと思われます。取引先がパスワード付きZIPファイルをメールで送ってきたが、やめてほしいとは言いにくかった、または言っても聞いてもらえなかった、という経験を持つ人も多いのではないでしょうか。

しかし、このように「PPAP廃止」の動きが加速してきたことで、「やめましょう」と提案しやすくなりそうです。代替手段としてまず考えられるのは、「Microsoft Teams」や「Google Workspace」といったグループウェアや、クラウドストレージを利用したファイル共有です。

感染症対策として、テレワークが推進されている状況でもあります。テレワーク環境の中心として活用できるグループウェアやクラウドストレージへの移行は、セキュリティリスク軽減の面からも推進されていくようになるでしょう。

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