持ち運べる24型モニタを探して

できるかできないかはやろうとしたかしないかでもある。そしてやろうとしたのなら、確率は低いかもしれないがそのできる可能性はゼロではない。

ぼくが24型のモニタをスーツケースに入れて出張にでかけたのは2013年の米・ラスベガスで開催された消費者家電のイベントCESが最初だった。出張先のホテルでの作業を考えたときに、大きなモニタがあるとないでは効率は段違いだ。

だから日常、仕事部屋で使っているような作業環境を出張先でも欲しいと考えていた。その渡米直前にHPからそれができそうな製品が発売されたのだ。もちろん同社としてはモバイルを想定してこの製品を出したわけではない。

24型フルHD(1920×1080)というのはWindowsが想定する96dpi(インチあたりのドット数)を、ほぼ等寸表示することができる。だから解像度が4Kを超えているならともかく、フルHDである限り、それ以上のサイズは必要ない。Windowsのスケーリングは縮小するということができないからだ。

こうして電源アダプタを入れると5キロ近い重量から始まった24型なんちゃってモバイルディスプレイのチャレンジは、今、電源を内蔵し、PowerDeliveryにも対応し、USB Type-Cケーブル1本で接続できる3キロを切った製品にまでダイエットした。

サイズ的にはスーツケースの片面にピタリと収まるし、そこそこ薄い。洋服類を緩衝材として詰め込んでおけば多少の衝撃も大丈夫だ。

こういうことを始めて約6年が経過した。現地に到着したときに壊れていたのはこれまでに1度だけだ。現地のホテルでスーツケースからモニタを取り出して電源を入れたら見事なシマシマが表示されてショックを受けた。

外観には何のダメージもなかったので、日本に戻ってから修理に出して復活させた。これもラスベガスだった。そんなことがあっても懲りず、1週間近い海外出張の仕事については必ず24型モバイルモニタを持参している。

渡航先のホテルでも、理想のモニタ環境を再現します。

世の中が自分の頭で考えていることに追いついてくれるまでは、既存のものでなんとかまかなうしかない。世の中はぼくが24型モニタをスーツケースに入れて強引に持ち運ぶことにまだ批判的だが、そろそろ大きなモニタを持ち歩きたいというニーズに目をつけたベンダーも出てきそうだ。

誰にも後ろ指をさされず、ラクに持ち運べる24型モニタが手に入るまで、この荒行は続ける。

やってみればできるもんだ。


山田祥平(やまだしょうへい・フリーランスライター。福井県出身)
パソコンの黎明期から、各誌紙に精力的に寄稿、その啓蒙に関わってきた老舗ライター。「できるインターネット」や「できるOutlook」、「できるノートパソコン」などで、パソコンを覚えたユーザーは少なくないはず。今なお、理想のスマートライフを追い続けている。

主な「できるシリーズ」の著書

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