「Ustreamらしい」番組はどのような番組?

 これまでに繰り返し述べているとおり、Ustreamは単なる無料動画配信システムではありません。ライブ中継がソーシャルストリームと合流し、ハプニングやコミュニケーションが生まれ、ときにはライブ中継の内容も変化していくことが、テレビや他の動画共有サービスにはない、Ustreamならではの特徴です。
 では具体的には、どのような番組が「Ustreamらしい」といえるのでしょうか? いくつかの例を紹介します。

時間の制約がない、リアルな対談番組

 Ustreamでは、対談番組が安定した人気を誇っています。その理由は、議論が白熱してきてもCMによる中断がないこと、話の腰を折るようなタレントも出てこないことなどです。
 テレビでは厳密な放送時間があり、なおかつCMの入る時間が決められているので、事前に緻密な構成台本が作られます。Ustreamの番組では話の流れによって番組の構成が変化していくことも多く、それが余計な演出のない、リアルな対談につながっています。
 議論そのものが白熱してくると、視聴している側も意見をいいたくなりますが、Ustreamでは、ソーシャルストリームにいつでも書き込むことができます。

ソフトバンクもUstream の番組を持っています(http://www.ustream.tv/softbankcorp-jpn)。2010年5月30日に行われた孫正義氏と佐々木俊尚氏の対談「光の道1」は約5時間に渡る長時間の議論に。3本に分けて録画が公開されています

ソーシャルストリームと対話する番組

 DJ TARO氏、サッシャ氏、ジョージ・ウィリアムズ氏など、ラジオで活躍する人たちがプライベートで行っているUstreamの番組は、ソーシャルストリームとの対話のしかたが巧みで参考になります。
 彼らの番組に共通するのは、自分で話しながらも巧みにソーシャルストリームのツイートを拾い、話を広げていく手法です。視聴者にとって、自分の発言を番組の中の人が取り上げてくれるのは、うれしいものです。
 ラジオの場合、メールやFAXで投稿したものは番組のディレクターがチェックするため、出演者がすべてを読むとは限りません。ところがUstreamでは、すべてのツイートが、出演者だけでなく他の視聴ユーザーにも見えています。
 たとえすべてのツイートに反応していなくても、この番組はソーシャルストリームの話題を拾ってくれるということが理解されると、親密度が上がります。

ソーシャルストリームとの一体感があるイベントのライブ

 講演会やイベントなどで、会場のスクリーンにソーシャルストリームと同じ内容のツイートを表示することがあります。
TweetBubbles」などのツイートを表示するソフトを利用し、ソーシャルストリームと同じハッシュタグのツイートを表示することで、実現できます。
 このように、会場で全員がソーシャルストリームを見ていることがわかるようにすると、ソーシャルストリームに参加している視聴ユーザーの意識に大きな変化が起こります。
 ライブ中継を見ながらツイートすると、映像の中に自分のTwitterのアイコンとツイートが表示される、そしてそれを会場の人たちが見ている、ということを実感できるので、前向きに関与していく気持ちになるのです。
 また、こうしてソーシャルストリームを表示することは、視聴ユーザーだけではなく、会場にいる参加者にも大きな心理的影響を与えます。今目にしていることに対する視聴者の率直な感想や、多様な捉えかたが表示されることで、イベントの内容が重層的に楽しめるのです。

TweetBubbles( http://tweetbubbles.net/ )を利用すると、プロジェクターに映したパソコンの画面にソーシャルストリー  ムと同じハッシュタグのツイートを重ねることができます

リアルタイムの「プロセスキャスティング」

 漫画家がペン入れの作業を、アーティストがペイント作業を、ミュージシャンが録音風景を、宇宙飛行士が船外活動をUstreamでライブ中継している番組があります。
 こうした「プロセスキャスティング(仕事の過程のライブ中継)」とでもいうべき番組はとても人気があり、固定ファンがしっかりと付いています。これまでダイジェストでしか見ることができなかった「なにかを作っていく過程」をリアルタイムで目撃できるのはとても新鮮で、リアリティに引き付けられます。
 こんなスピードで作品ができあがっていくんだ! という驚きがあったり、自分が寝ている間もこんなにがんばってもの作りしているのか! と等しく与えられた時間を他者がどのように使っているかを、リアルに感じることができます。
 プロセスキャスティングは、有名人のものでなくても興味深いものです。編集されていない「今」という時間を共有する、Ustreamならではのダイナミズムがもっとも発揮できるジャンルといえます。

音楽ライブは小さい画面でも息づかいが伝わる

 Ustreamで人気がある番組のジャンルのひとつに「DOMMUNE(ドミューン)」など、クラブやライブハウスからのライブ中継があります。小さな画面に小さなスピーカーまたはヘッドホンでの視聴となりますが、そこにアーティストやDJの息づかいが感じられ、大きな感動を与えてくれます。
 ヘッドホンならば大音量で楽しむこともでき、ソーシャルストリームとともに、非日常的なハイテンションにもなれます。
 音楽ライブのソーシャルストリームは、理屈や議論ではなく、どう感じているか? のコメントがどんどん流てくるので、独特の雰囲気があります。有料の音楽ライブをライブ中継することもありますが、視聴ユーザーがそのライブハウスの存在を知り、次に足を運ぶことで、宣伝としての効果が期待できます。音楽ライブ中継は、パブリシティとしてもこれまでの衛星放送の音楽チャンネルのような役割を担っていくでしょう。

DOMMUNE( http://www.dommune.com/ )。宇川直宏氏が渋谷に立ち上げたスタジオからのライブ中継番組。毎晩多彩な番組を展開しており、国内でもっとも人気がある番組のひとつです

「通信」の特性を活かして地域の情報を全国に

 ラジオもテレビも放送法のもと放送が行われているので、全国、全世界に同時に情報を伝達することはできません(各社ごとに放送できる地域が決まっており、全国放送は全国の放送局をネットすることで実現しています)。しかしUstreamは、インターネットがあれば全世界どこからでも視聴できます。
 なにかと東京中心になりがちなラジオやテレビと違って、Ustreamではさまざまな地域からの多様な情報が、リアルタイムに発信されています。
 地域で取り組んでいる祭りやイベントの様子をライブ中継することには、大きな意味があります。こうしたもののライブ中継が成功する基準は「現場にいる人数よりも多くの人に情報が伝わること」です。
 最初から100人、1000人の人に視聴してもらおうとする必要はありません。10人の会議が15人の視聴ユーザーを集めることができれば、成功といえるのです。そこから徐々に視聴ユーザーを増やしていけるように中継を工夫していきましょう。地域の元気を全国に伝える絶好の回路がUstreamです。

[ヒント]「動物」はUstreamでもキラーコンテンツ

「子どもと動物には勝てない」とよくテレビの世界ではいわれますが、それはUstreamでも同じです。動物のライブ中継は、番組の素材として非常に強力です。ふくろうの巣に仕込まれたカメラによる中継「The Owl box(http://www.ustream.tv/theowlbox)」は世界一の人気を誇る番組ですし、子犬の中継なども、常に人気コンテンツ一覧に並んでいます。動物はカメラを意識しない、究極的にリアルな存在です。なにかペットを飼っているのなら、その様子を中継してみるのもおもしろいでしょう。

[ヒント]人気番組のキーワードは「リアル」と「参加」

Ustreamらしい番組の特徴の1つに、テレビ番組のように作り込まれたものでなく、現場や生活のそのままのリアリティが伝わるライブ中継の番組であることが挙げられます。また、ソーシャルストリームによって視聴ユーザーが番組に参加できる双方向性が、積極的に活用されていることも、特徴の1つといえます。