「格安スマホ」の料金は魅力! でも乗り換えは不安?

「格安スマホ」を知っていますか? 生活必需品となりつつあるスマートフォンを安く利用できるということで注目が集まり、テレビや新聞、量販店の店頭などで「格安スマホ」の言葉を見かけることが増えてきました。

格安スマホはデータ通信料金が安く、データ通信の比率が大きいスマートフォンの場合、月々の料金をNTTドコモ、au、ソフトバンクといった大手キャリアよりも安く抑えることができます。一方で、安いからには不便な点もあるのでは? と漠然とした不安を感じている人もいるかもしれません。

大手キャリアから格安スマホへの乗り換えは、誰でもできますが、注意が必要な点がいくつかあります。この連載では、格安スマホに興味がある人向けに、格安スマホのメリットとデメリット、大手キャリアから乗り換えるときに注意が必要な点と乗り換えの手順などについて、全4回に分けて解説していきます。

連載の初回となる今回は、大手キャリアのスマホと格安スマホでどのような違いがあるかと、料金がどの程度違うのかを解説します。

大手キャリアと格安スマホの違いとは?

格安スマホはスマートフォンと通信サービスの組み合わせ

格安スマホの通信サービスは、「MVNO」と呼ばれる通信事業者が、NTTドコモやauから通信回線を借りて提供しています。スマートフォン自体ではなく、この通信サービスのことを「格安スマホ」と呼ぶこともあります。また、通信サービスを乗り換えるときにスマートフォン内の「SIMカード」を格安スマホ事業者のものに挿し替えることから、「格安SIM」と呼ぶこともあります。

格安スマホの通信サービスにはさまざまな事業者が参入しています。いま人気のある事業者としては、OCNやIIJ、楽天モバイル、U-mobile(U-NEXT)、BIGLOBE、mineo(ケイ・オプティコム)などがあります。

大手キャリアではスマートフォンも通信サービスもキャリア提供となりますが、格安スマホでは、ユーザーがスマートフォン本体と通信サービスを選び、組み合わせて利用します。格安スマホとして、選んだ通信事業者のSIMを利用できるスマートフォンは「SIMフリースマホ」とも呼びます。

大手キャリアでは通常、スマートフォン本体の購入と通信サービスの購入をまとめて行います。しかし、格安スマホではユーザーがスマートフォン本体と通信サービスを組み合わせて利用します。

基本的なサービス内容や利用できるエリアは変わらない

大手キャリアと格安スマホで、利用できる基本的なサービスは変わりません。音声通話とデータ通信が可能で、Webブラウジングや「LINE」などのSNS、アプリのダウンロードなど、インターネット上の各種サービスを利用できます。

格安スマホはNTTドコモやauから通信回線を借りて通信サービスを提供しているので、基本的に利用できるエリアは大手キャリアと同じです。通信速度は通信事業者ごとに微妙に違いがあり、時間帯などによっては大手キャリアの方がやや速いこともありますが、大きく変わるわけではありません。

キャリアメールなどのサービスは利用できなくなる

格安スマホに乗り換えると、大手キャリアを解約することになるので、大手キャリアが提供している各種サービスは使えなくなります。

電話番号はMNP制度を使うことで移行できますが、もっとも影響の大きいのがキャリアメールです。友達や家族との連絡に使っているメールアドレスが利用できなくなることは、一般に格安スマホへ移行するときの大きなハードルとなります。

しかし、Gmailやoutlook.comなどキャリアに依存しないメールサービスに移行し、余裕を持ってメールアドレスの変更を周囲に知らせておくことで、無理のない以降は可能です。

大手キャリアのサービスの中でも、キャリアメールが使えなくなることは移行の心理的ハードルになりがちです。キャリアに依存しないメールサービスに乗り換え、余裕を持って周知するようにしましょう。

サポートの充実度は大手キャリアに及ばない

もう1つ、注意しておきたい大手キャリアと格安スマホの違いがあります。それはサポート体制の違いです。

大手キャリアは全国にショップを構え、利用者は店員と対面しながら手続きをしたり、説明を受けたりと手厚いサポートを受けられます。一方、ほとんどの格安スマホ事業者には、全国展開しているショップがありません。

一部の事業者は量販店などの店頭で手続きできたり、独自のショップを展開していたりしますが、大手キャリアほどサポート体制は充実していません。

多くの格安スマホでは、Webサイト上で各種手続きをしたりサポートを受けたりすることになります。インターネットの利用に慣れていない人には、やや不向きだと言えます。

大手キャリアと格安スマホの主な違い
大手キャリア格安スマホ
主な事業者NTTドコモ、au、ソフトバンクOCN、IIJ、楽天モバイル、U-mobile、BIGLOBE、mineo
販売形態スマホと通信サービスがセットになっているスマホと通信サービスを自由に組み合わせられる
オンラインサービスメールやコンテンツなどのサービスを通信事業者が提供ユーザーが任意にインターネット上のサービスを利用
サポート体制全国にショップがあり、店頭で手続きがトラブル対応ができる手続きやトラブル対応はインターネット経由が基本

通信料金やスマートフォンの価格はどう違う?

毎月の料金は数千円安くできる

格安スマホの大手キャリアに比べると、格安スマホはよりシンプルな料金プランでサービスを提供していることが多いです。

以下は、大手キャリアと格安スマホでかかる費用・料金の違いを、筆者が調査した標準的な金額で比較した例です。両者とも音声通話付きの料金プランで、大手キャリアでは音声通話が準定額となるプラン、いずれも月間のデータ通信量を5GBとした場合を想定しています。

大手キャリアと格安スマホの費用・料金の比較
大手キャリア格安スマホ
スマートフォンの価格0〜6万円2〜8万円
月額料金7,000円2,300円
通話料金1回5分まで無料、以後は20円/30秒20円/30秒

「大手キャリアでは、スマートフォンを購入すると24カ月間だけ月額料金が割引されますが、スマートフォン販売店の店頭などでは、その割引の24カ月分を引いた「実質価格」が表記されることがあります。

上の表では、スマートフォン本体の価格を割引額込みの「実質価格」で計算しているため、大手キャリアの方が本体が安くなっています。大手キャリアの毎月の請求額は月額料金から割引額が差し引かれるため、もっと安く表記されることがありますが、割引抜きの金額は、だいたい7,000円以上となります。」

大手キャリアの割引により、スマートフォンの価格は格安スマホよりも安くなることがあります。しかし、月額料金を含めた支払い総額で比べると、だいたい1年間利用していれば格安スマホの方が安くなります。

仮に実質0円で端末を購入し、通話をしなかったとして、大手キャリアの12か月分の月額料金は84,000円です。対して格安スマホの12カ月分の月額料金は27,600円。その差額である56,400円未満の価格で端末を買えば、1年で格安スマホの支払い総額の方が安い計算になります。

1カ月で通信するデータ量がより少ない/多い場合はどうでしょうか? スマートフォンにとって重要なデータ通信の料金は、格安スマホ事業者も大手キャリアと同じように、データ量の違う数種類の料金プランを用意しています。典型的な料金プランの標準的な料金を比較すると、以下のように、どのデータ量でも格安スマホの方が安価となります。

データ量の違いによる月額料金の比較
データ量大手キャリア格安スマホ
3GB6,200円1,600円
5GB7,000円2,300円
10GB10,000円3,300円

通話アプリで通話料金は節約できる

通話料金に関しては、通話定額サービスがある大手キャリアの方が安くなることがあります(だいたい毎月2時間以上電話する場合)。

しかし、電話する相手が家族や友人などに限定されている場合は、LINEなどの通話料金がかからないインターネット電話アプリを使うことで通話料を節約できます。通話が多い人は、そうしたアプリを活用することをオススメします。

LINEを利用すれば、友達との音声通話やビデオ通話はデータ通信で行えるため通話料がかかりません。

楽天モバイルなど一部の格安スマホ事業者では、通話の準定額プランを用意しています。インターネット電話アプリを使えない相手と電話することが多い人は、通話料金が抑えられる格安スマホ事業者を選ぶといいでしょう。

【大手キャリアと格安スマホの違い まとめ】
  • 格安スマホが基本サービスで大きく劣ることはない
  • キャリア提供のサービスを利用中の場合は、代替サービスへの移行が必要
  • 手続きやサポートはWebサイト経由が基本で、窓口に頼りきりの人には不向き
  • 月額料金を数千円節約できる

月額料金をどれくらい節約できるか概算してみよう

現在、家庭でスマートフォンに支払っている月額料金と、上記の格安スマホの場合の料金とを比べて、毎月どれくらい料金を節約できそうか比べてみてください。1人で5,000円前後、夫婦2人なら1万円前後の節約も可能なはずです。

なお、大手キャリアには固定インターネット回線とのセット割引など、さまざまな条件の割引が用意されています。スマートフォンを解約すると、これらが値上げになってしまう可能性があるので、利用の有無を確認しておきましょう。

家族割引の類を利用している場合(データ通信料金を家族間で分けあうサービスで誰かのデータ通信量が非常に多い場合や、子ども用のキッズケータイを無料で利用している場合など)は、それらの料金も考慮しましょう。

以上の条件を加味しても、大手キャリアでの料金が格安スマホより安くなることは、ほとんどありません。データ通信量を家族で分け合えるサービスに関しては、同様の仕組みを提供している格安スマホの事業者もあります。

大手キャリアの2年契約の途中で解約金(1万円程度)を払っても、数カ月で得できるケースは多くあります。

料金をかなり安くできそうだとわかったら、具体的な検討を進めましょう。SIMフリースマホと格安SIMを入手し、移行の準備を整えていきます。

具体的な格安スマホへの移行方法として、第2回ではスマートフォン本体の入手方法、第3回では通信サービスの選び方を詳しく解説します。そして第4回では、キャリアの各種サービスから代替サービスへの移行方法を解説し、具体的な移行手順がわかるようにします。

HINT乗り換え時にかかるさまざまな費用

大手キャリアから格安スマホに乗り換えるときには、各種手続きの手数料がかかります。大手キャリアでは2年ごとに自動更新される割引契約(いわゆる「2年縛り」が一般的で、契約の更新月以外で解約しようとすると、1万円程度の解約金がかかります。解約金をかけずに格安スマホへ移行したい場合は、更新月をチェックしておきましょう。

格安スマホでも大手キャリアで使っていた電話番号をそのまま使いたい場合は、MNP制度を使いますが、これには手数料が3,000円程度かかります。また、格安スマホを新たに契約する場合も、手数料として3,000円程度かかります。