検索、Webサービス、そしてWebの「外」へ

 これまで見てきたように、Googleは検索を含めたさまざまなWebサービスを提供しています。しかし今後、GoogleはWebの「中」だけにとどまっているつもりはないようです。

 2008年以降、GoogleはWebを閲覧するためのブラウザー、そしてブラウザーを利用するためのOS、OSを動作させるためのデバイスと、Webの「外」へ進出しつつあります。

 Googleには「ユーザーに無料でサービスを提供しながら広告で利益を上げる」という、非常にシンプルなビジネスモデルがあります。サービスなどを無料で提供しても、それによってユーザーとの接触機会、すなわち広告の表示機会を増やすことができれば、Googleの利益につながるわけです。Webの外への進出は、このような方針に沿った事業展開であると言えます。

独自ブラウザーと独自OSのブランド「Chrome」

 2008年9月、Googleは独自のブラウザー「Google Chrome」を公開しました。Gmail などを利用するために重要な技術「JavaScript」を高速で実行できることが話題となり、Googleのサービス群と相性のよいブラウザーとして評価を得ています。

 2009年7月には、パソコン用のOS「Google Chrome OS」を発表。起動が高速で、スペックの低いパソコンでも軽快に動作する、Webサービスの利用に最適化したOSとなっており、搭載デバイスとしてネットブックを最初のターゲットにしています。提供開始は2010年後半の予定で、現在は「Chromium OS」として開発中のソースコード(ソフトウェアの元となるもの)が公開されています。

 ブラウザーであるGoogle Chromeはともかく、OSであるGoogle Chrome OSまでもが無料であることは、大いに業界を驚かせました。なぜなら、現在のネットブックに搭載されているOSは、多くが「有料の」Windowsだからです。

 Google Chrome OSを搭載したネットブックは、Windows搭載機よりも軽快で、かつ安い製品として登場することが予想されます。これはもちろん、ユーザーがGoogleのサービスに触れる機会をさらに増やすことにつながっていくでしょう。
▼Google Chrome
http://www.google.com/chrome/
▼Chromium OS(The Chromium Projects)
http://dev.chromium.org/chromium-os/

ブラウザーの中ですべてのアプリケーションを操作するようなインターフェースを採用している

0.Google ChromeでWebページを見る

Google ChromeはWindows 7/Vista/XPに対応しており(Macはベータ版のみ)、Google Chromeのページにある[Google Chromeを無料ダウンロード]からダウンロードとインストールが行えます。Webページを表示する速さ、特徴的なタブやブックマークなどのインターフェースを体験してみましょう。

1 アドレスバーに検索したいキーワードを入力して [Enter]キーを押す,2 検索結果が表示されたら見たいページをクリック  ,[Ctrl]キーを押しながらクリックすると新しいタブでページを表示できる

ページが表示された  ,[☆]をクリックすると表示しているページをブックマークできる

0.Gmailのショートカットアイコンを作成する

Google Chromeには、利用しているWebサービスのショートカットアイコンを作成する機能があります。GmailやGoogleカレンダーなど、頻繁に利用するWebサービスは、アイコンをデスクトップに置いておくとアクセスが便利になります。

1[ページメニュー]-[アプリケーションのショートカットを 作成]をクリック,Google ChromeでGmailを表示しておく

2 ショートカットを作成したい場所をチェック  ,[Gears]が表示された,[OK]をクリックするとショートカットが作成される

0.モバイルOS「Android」と自社ブランドデバイス

 Webの外へ向かうもう1つの展開として、2007年11月にGoogleが中心となって「Open Handset Alliance(OHA)」という団体が発足。スマートフォンをはじめとしたモバイルデバイス向けのOS「Android」を推進しています。日本では、2009年7月にNTTドコモから国内初のAndroid搭載スマートフォン「HT-03A」が発売されました。

 さらにGoogleは、2010年1月に自社ブランドのAndroid搭載スマートフォン「Nexus One」の発売をアメリカで開始しました。かなりハイスペックな仕様となっており、「Android搭載スマートフォンはこうあるべき」ということをGoogleが示した標準機と考えてよいでしょう。

 他社のスマートフォンの多くが特定キャリアのSIMカードでしか動作しない「SIMロック」の状態で販売されているのに対し、Nexus Oneは通信キャリアをユーザーが選べる「SIMロックフリー」の状態で、Googleが自らオンラインで販売します。2010年1月現在では日本では利用できませんが、近いうちに国内でも入手可能になると予想されています。

GmailやGoogleカレンダーなどとの相性がよく、簡単に同期できる

[ヒント]太平洋を横断する通信ケーブルや発電事業も

Googleは、インターネットやコンピューティングを物理的に支える基盤の構築にも着手しています。2008年2月、GoogleやKDDIなどの共同出資による日米間の光海底通信ケーブル「Unity」が発表になりました。2010年の運用開始を予定し、作業が進められています。また、Googleは以前からクリーンエネルギーにも関心を示しており、2007年より本社に太陽電池パネルを導入。太陽光発電や風力発電を手がける企業への投資も行っています。今後はエネルギー開発事業を本格的に展開するという情報もあり、何か新しいエネルギーが開発されるかもしれません。

[ヒント]無償プラットフォームが実現する「センサークラウド」

Androidは優れた機能を持つ無償のモバイルデバイス向けOSとして、スマートフォン以外にも導入が進むと考えられます。テレビなどのAV機器だけでなく、冷蔵庫や電子レンジなどが、新世代のいわゆる「ネット家電」として登場するかもしれません。そして、各家庭に普及したAndroid搭載デバイスが備えるさまざまなセンサーが、天候や気温、地震の揺れ、さらには家族の健康状態など、あらゆる情報を保持してインターネットを通じて共有できるようになると予想されます。このような世界に無数のセンサー網が張り巡らされた状態は「センサークラウド」と呼ばれます。実現するのはまだ先のことですが、そのときには情報のあり方が大きく変わるでしょう。

[ヒント]日本でも増え始めたAndroid搭載デバイス

無料かつ基本的なインターフェースの整ったOSであるAndroidは、ユーザーだけでなくメーカーにとっても非常に価値があります。すでに日本国内でスマートフォン以外のAndroid搭載デバイスの実証実験が開始されており、レッスン3で紹介したNTT東日本の「光iフレーム(仮称)」も、OSとしてAndroidを搭載しています。また、NECビッグローブは2010年2月より「クラウドデバイス&サービス事業」を展開すると発表しており、その中心となるデバイスは、やはりAndroidを搭載しています。今後もAndroidを搭載したさまざまなモバイルデバイスが登場すると予想されます。
▼andronavi(NECビッグローブ)
http://andronavi.com/

Androidを搭載し、タッチパネルでインターネットの閲覧などができる